7.遺留分について


遺留分とは、被相続人が遺言によっても自由に処分できない財産のことです。つまり、被相続人が遺言によって全財産を自由に処分できるとすると、相続人間に不平等が起こったり、相続人が経済的な基盤を失うおそれも考えられるので、そのようなことを防ぐために配慮されたものです。どのような遺言書が書かれようとも相続人が相続できる割合です。

 

遺留分権利者と割合
 


遺留分の権利を持つ人とその割合は次のとおりです。

 遺留分権利者
  • 配偶者
  • 第一順位の子
  • 第二順位の直系尊属
  • 相続欠格者および廃除者の直系卑属(代襲相続人としての子や孫)

 遺留分の割合
  • 被相続人の配偶者または子が相続人になる場合 → 相続財産の2分の1
  • 被相続人の直系尊属のみが相続人になる場合  → 相続財産の3分の1

※兄弟姉妹には、遺留分がありません。相続人が兄弟姉妹のみであれば、被相続人は遺言により全財産を処分できることになります。

また、遺留分の放棄も可能です。相続が開始(被相続人の死後)していれば、いつでも自由にできますが、相続の開始前(被相続人の存命中)は、推定相続人である本人が家庭裁判所に申し出て、許可を得なければなりません。



 

遺留分の算定方法
 


遺留分の額は次のように計算します。
 
遺留分を算定するための財産の価額
相続時における被相続人の積極財産の額 + 相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内)+ 第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)− 被相続人の債務の額
 
各相続人の遺留分の額
遺留分を算定するための財産の価額 × 2分の1(※) × 遺留分権利者の法定相続分
※直系尊属だけが相続人である場合は3分の1

遺留分を計算するための特別受益(生前贈与等)の持戻しについてはこちらをご覧下さい。
相続人各人の遺留分計算の具体例はこちらをご覧下さい。
 
 

 

遺留分侵害額の支払請求権
 


遺留分が侵害されていることがわかれば、自己の遺留分を主張し、遺留分の限度で金銭をもって取り戻すことができます(民法の改正により2019年7月1日以降に開始した相続から、「遺留分減殺請求権」→「遺留分侵害額の支払請求権」に変更になりました)。
 
この意思表示は、遺留分を侵害している相手に対して、一方的に意思表示することにより、遺留分の範囲で金銭の支払いを請求できます。その意思表示は、法的には口頭でも足りるとされていますが、証拠を残すためにも通常は内容証明郵便(配達証明付)にて行います。
 
遺留分侵害額の支払請求権を行使されると、受遺者や相続人は侵害額を金銭で支払わなければなりません。また、気をつけなければならないことは、遺留分侵害額の支払請求権は、遺留分が侵害されたことを知ったときから1年以内に、相続開始のときから10年以内に行使しなければなりません。
 
 

┣ 遺留分侵害額の請求調停について → 「遺留分侵害額の請求調停」





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